COLUMN

銀行借り入れの前にやること

中小企業財務を解説したの名著「財務革命」の180ページに「資金調達の方法(銀行借入の前にやることがある)」が解説されています。

 

 

著者である棚橋隆司先生は

・債権回収の徹底

・在庫、仕掛品の圧縮

・長期工事物件の資金交渉

・買入債務の支払方法変更

・制度融資の導入

・商業手形の割引実施

の6つをあげておられ、これらの最大限実施した上でその後に銀行融資を検討すべきだと解説されています。

 

特に1番目の「債権回収の徹底」即効性が高い資金調達方法で、中小零細企業が弱い分野であると言えます。先日、私共のお客様で面白い事例がありました。

 

この法人は営業利益はトントンで、事業に関係のない不動産収入でようやくプラスになっており、このプラスでなんとか銀行借入の返済を行なっておられる状況でした。

 

お伺いをして月次試算表を拝見すると、それなりの額の売掛金が計上されていました。詳細をお伺いすると、毎月売掛金が発生し、その回収を翌月に行なっているが、どうしても少しは未回収が発生してしまうとの事。

3ヶ月以上、未回収になっている売掛金残高をお伺いすると社長は即答が出来ませんでした。資金繰りが厳しく銀行に追加融資を頼みに行こうとされていたので、私からは前述の「財務革命」の言葉をそのままお借りして「銀行借金の前にすべきことがあるのでは?」とお話し、真っ先にこの売掛金回収を実行すべきだとお伝えしました。そして一番の問題は、長期未回収になっている先とその残高を正確に把握が出来ていないことである指摘しました。

 

すぐに過去の請求書発行内容と、回収状況がわかる資料を出してもらうように依頼し、半年くらい遡って調べると、数件の未回収があり、その残高は決して小さな数字ではありませんでした。社長に、「いますぐこの未回収分が回収出来れば、銀行に融資を依頼しなくてもすぐに口座の残高が増えますよ」とお伝えしたらようやく理解されたご様子でした。

 

「早速、連絡をしてすぐに払ってもらうように依頼します」とおっしゃって面談を終えましたが、先日社長から、「奥田さんに言われてからすぐに連絡をしたところ、先方から『すぐ支払ます』との事で無事に回収が出来て先ほど振込が確認できました」と連絡がありました。回収額をお伺いすると、それなりの金額で社長は「資金繰りが多少ラクになりました。これで銀行から借りなくても済みそうです!ありがとうございました。」との事。売掛金回収の重要性が十分にわかったので、これからは管理を徹底的に行って、回収を100%に近づけるように取り組みます、ともおっしゃっておられました。

 

中小企業の法人保険を取り扱っていると、資金繰りに関する相談を受けることが多くありますが、資金繰が改善した具体的な事例でした。

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

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