COLUMN

法人クレジットカードの落とし穴

法人で使う経費の決済を法人名義のクレジットカードで決済をする事があります。さらには各種税金をクレジットカードで決済する事も可能です。これを上手く活用すればクレジットカードにポイントを貯める事が出来ます。

ただこの法人クレジットカードのポイント活用は十分に注意をする必要があります。

 

注意点①手数料

税金納付にはクレジットカード手数料が別途上乗せされます。

 

国税のクレジットカード決済はこちらのサイトで可能です。

 

・国税クレジットカードお支払サイト

 

このサイトに決済手数料が記載されています。さらに納付額によっての決済手数料がシミュレーション出来るようになっています。試しにここで試算をしてみます。

 

・納付額10,000円→決済手数料83円(手数料率0.83%)

・納付額100,000円→決済手数料836円(手数料率0.83%)

・納付額1,000,000円→決済手数料8,360円(手数料率0.83%)

・納付額9,900,000円→決済手数料82,764円(手数料率0.83%)

※決済手数料は消費税込み

 

クレジットカード決済手数料として0.83%の決済手数料が掛かります。

 

ただ、クレジットカード決済の場合、利用額に応じて1%のポイントが付与されますので、

1%-0.83%=0.17%分が

メリットになると言われています。

 

さらにカードブランドによっては1%超のポイントが付与されるケースもありますし、このポイントを航空会社のマイレージに返還をするとさらに上乗せでポイント効果が得られることも狙えます。

 

ただ、これには結構怖い落とし穴があります・・・・。

 

注意点②ポイント利用時の経理処理

 

法人クレジットカードですから法人で使う経費の決済に利用をします。この経費の損金可否については可能という前提で話を進めます。

 

その決済で付与されたポイントを利用する時にどういう仕訳になるでしょうか?

 

例えば1万円の消耗品費を購入し、そのうち1,500円をポイントで支払った場合、

 

借方 貸方
消耗品費 8,500円 現金・預金 8,500円

 

という仕訳になり、1,500円相当が値引きになったという処理方法が考えられます。

 

違う考え方では、

借方 貸方
消耗品費10,000円

現金・預金8,500円

雑収入1,500円

 

という処理方法が考えられます。どちらの処理にするか?見解は分かれるのかも知れませんが、これはあくまでも「法人経費」として損金算入が可能なケースです。

 

ところがこのポイントを経営者が私的な支出に使用した場合、どうなるでしょう・・・・

 

例えば法人の経費決済で貯めたポイント1万円を使って私的な決済をした場合・・・

 

明らかにこの1万円分のポイントは経営者に対する経済的利益の供与ですから

 

借方 貸方
役員貸付金 10,000円 雑収入 10,000円

 

という処理になります。

 

当然ながら雑収入ですから法人所得は上昇する事になります。

 

ただ税務調査において、法人ポイントの私的利用をしていると指摘された場合には、

借方 貸方
役員賞与 10,000円 雑収入 10,000円

 

という仕訳だと指摘されますと、法人税&所得税の「ダブル課税」となりポイントメリットどころの話ではなくなります。

 

少額な決済であれば問題ないのでしょうが、高額な決済となった場合、税務調査が入ったに調査官が、「クレジットカード決済が多いですが、このポイントはどう管理されていますか?」なんて質問があることは想定しておかなければなりません。

 

注意点③ガバナンス上の問題

経営者1人の法人ですとか、経理はすべて経営者又は経営者の奥さんが担当しているような零細法人であれば問題はありませんが、注意しないといけないのは法人規模がそこそこになって、経理担当者を置いた場合です。

 

当然ながら経理担当者が経費処理をしますので、担当者はクレジットカードでどんな決済がされて、カードの利用額が幾らになっているかを管理しています。さらにクレジットカード会社からの通知で、付与されているポイントを確認する事も出来ます。

 

このポイントを経営者が、私的に流用している事実を経理担当者が見たらどう思うでしょうか?少なくともこの経理担当者は、経営者へ不信感を持つでしょうし、その不信感を他の従業員に話さないという保証は一切ありません。

 

表では経営理念や企業理念を掲げ、社員を鼓舞している経営者が私的にポイントを使っている事実を経理担当者が知った時、企業のガバナンスは崩れ去る様に思います。

 

 

ですので、事業用経費の決済に使ったクレジットカードで得たポイントは、事業用経費の割引など事業関連で利用する事が大前提となります。もちろん、出張で得た航空会社のマイレージポイントも、出張時の旅費精算で使うのが当然と言えるでしょう。

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

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