COLUMN

遺言書による保険金受取人変更は要注意!

先日、お客様よりご相談があり、保険法に規定されている「遺言による保険金受取人の変更」についていろいろと調べておりました。

まずは確認のために保険法の条文を記載しておきます。


保険法第44条・73条(遺言による保険金受取人の変更)

保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。

2.遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。

 

※筆者注:保険法44条は生命保険契約の規定で、73条は傷害疾病定額保険に関する規定です

 

 

基本的に保険金受取人の変更については、契約者の申し出と被保険者の同意が必要です。ただ生命保険契約において、保険金受取人に指定が出来る人は一定の条件があります。

 

このため契約上の手続きとして保険金受取人になれない場合や変更が出来ない場合には、遺言書による受取人を指定するということが「理論上」は可能です。

 

「理論上」と書いたのは、現実問題として本当に遺言書指定人に保険金を届けることが出来るのか?は別という意味です。

 

実際に何社かの保険会社さんに「遺言による受取人変更」の実例や実態を調べてもらいました。

 

その結果、実際にまだ対応したことがないという保険会社さんもありましたが、対応している保険会社さんではトラブルになっている事案もあるとのこと・・・

 

遺言書にて指定された受取人が保険会社へ保険金支払いを請求。

保険会社が遺言書の有効性を確認して遺言書指定受取人へ保険金支払

その後、保険証券記載の受取人が保険金請求をしてきて遺言書指定受取人へ支払っている事実を認識

保険会社を相手に、遺言書の有効性が認められないとして保険金の支払を要求している

 

こういう事案があることを幾つかの保険会社さんからお聞きしました。

 

さらには、証券上の保険金受取人と遺言書の指定受取人との間で揉めているために、保険金支払が保留になっている事案も各社である様です・・・・

 

なお各社とも年々、遺言書による受取人からの保険金請求が増えているとのことです。

 

確かに遺言書による保険金受取人指定は、保険証券記載内容と異なるので、保険金受取人に指定されている人は受取れると思っていたものがいざ保険金請求をすると受取れないと分かると揉めますよね・・・

 

特に遺言書に記載されている人が第三者であったり、保険金受取人との関係性が悪い人であれば、揉める事が容易に想像出来ます。さらに令和2年7月より実施されている「遺言書保管制度」により、今後は自筆証書遺言がより普及することが想像出来ます。

 

ちなみに法務省HPによりますと、令和2年12月末時点での法務局への遺言書保管制度申請件数は12,631件にもなっており、今後、益々増えてくると思われます。

 

今回、私が相談を受けた事案でも遺言による保険金受取人変更は一つの方法としてはあることは事実でした。

 

ただいろいろと調べて見た結果、これを保険代理店の立場で話しをするには、お客様の状況をキチンと確認・把握した上でないと容易に案内が出来ないと思いました。そのため、あくまでも遺言による受取人変更は一つの方法としてご説明はしましたが、その他の方法として幾つかの問題解決策を提示しました。

 

その結果、ご相談者は最終的に遺言による受取人変更でない方法を選択されました・・・

 

実際に遺言による受取人変更を検討しなければならない様なケースの場合、この方法はあくまでも一つの選択肢ではありますが、実際には揉めるケースが容易に想像出来ますので、幾つかの選択肢を合わせて検討されることをオススメいたします。

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

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