COLUMN

Case15:変換権行使を想定した生命保険活用事例

〈お客さま概要〉
業 種:設計事務所
相談者:A社長(65 歳) 
年 商:2億円

 

 弊社提携企業が主催をしたセミナーに受講された経営者Aさんから「生命保険について相談がしたいので、一度来てくれないか?」との依頼をいただき訪問しました。少し込み入った内容になるので、事務所ではなく自宅で話がしたいとのことで、土曜日の午後にご自宅へお伺い致しました。

リビングに通していただき、席に座ると同時に奥さまから「実は、2人とも再婚で2人の間には子どもはおりません。ただいろいろな事情があり、私の妹の子どもである姪を養子にするつもりにしています。主人は65歳、私は今年53歳と少し年齢が離れており、先にこの人に何かがあった時には、私と姪が困るので、ある程度の保障がほしいと考えておりました」とお話になり、現在加入されている保険証券を拝見しました。

 

現在は某社の収入保障保険が月額20万円あるだけで、法人でも生命保険は加入していないとのこと。ご自宅の住宅ローンはあと3年で完済するのと、団体信用生命保険を付帯しているので、とりあえず住むところには困らないのですが、その後の生活資金を心配されていました。

 

そして奥さまから「一応、私なりにいろいろと調べてお付き合いのある保険屋さんに頼んで幾つか見積を作ってもらい、これがよいかな?と思っています」とある保険会社の設計書を提示されました。

 

提示された設計書は某社の収入保障保険で、月額60万円の保障で保険料はある程度高額な保険料の内容でした。奥さまは私を値踏みするよな表情で「どう思われますか?」と意見を求めて来られました。

 

私からは「Aさんは経営者でもあり、家族の大黒柱でもあります。両方の側面から見て保険を検討しなければならないと思います」と説明をした上で、法人・個人の保険付保についてのメリットとデメリットを簡単に説明しました。

 

そしてAさんに対して事業承継についてご質問をしました。「Aさん、現在の法人はAさんの後を継ぐ後継者や候補の方はおられるのですか?」

 

するとAさんは「後継者はおらず、私が辞める時は事務所も閉めるつもりで、その時には私より若い同業のBさんに顧客と事務員を引き継いでもらうつもりで、そのように話をし
てBさんからも了承をもらっております」とのことでした。

 

「それであれば、Aさんが辞められる時は取れるだけ退職金を取っても大丈夫ですよね?」と質問をすれば「跡継ぎはいないですから、法人としては解散するだけです」との回答でした。

 

「それならば、今のキャッシュフローで負担しても問題ないレベルで、保障と積立を兼ねた生命保険を検討されてはどうでしょうか?」とお伝えすると、Aさんからは「住宅ローンがあと3年残っているので、それが終わるまではある程度の役員報酬が必要で、今の時点では極力負担を減らしておきたいんです」とおっしゃいました。

 

ここまでの言葉を引き出しておいた上で、奥さまに対して「奥さまが手配されたこの生命保険は、保険料が高いか安いかは幾つか試算しないと分かりませんが、この保険会社では使えない生命保険の機能が1つあるんです」とお伝えした上で、生命保険の変換制度について簡単に説明を行いました。

 

「生命保険の機能の一つとして、契約してから2年経過した後に、その時点の保険金額を無診査で他の保険へ変更する『変換』という機能があるんです。これを活用すれば、今の段階ではとりあえず安い保険料で保障を確保しておき、ローンが終わって保険料負担が増やせる時に、その時の保険金額で積立ができる保険へ変換をすれば、万が一の保障を確保しつつ、Aさんが『もう仕事を辞めたい』という時には解約をすればたまっているお金を退職金として受け取って貰うことができるんです。さらにその時に、将来発生する相続税負担を考慮して、解約するのではなく、また他保険へ無診査で変換をして、その時点で必要な保障を個人で確保することができるんです」

 

と変換制度について簡単な図表を書いて説明をすると、Aさんと奥さまは「こんなことができるんですか!知りませんでした」と驚かれた様子で「実は主人、幾つか薬を飲んでいるんですよね。今は大丈夫ですが、将来、もし悪化した場合でも、保険に入れるのは心強いですね」とご納得をいただきました。

 

そして奥さまから「奥田さん、実は保険がない今の状態が不安なので、できれば早急にご提案を頂けませんか?」との申し出を受けましたので、お二人に了承をいただき、普段はお客さまの前で設計書を作成することはないのですが、急きょその場で保険会社の試算ソフトを立ち上げて設計を開始しました。

 

私が選んだ保険会社は「他保険への変換が可能であること」と「変換時の保険金額を計算する際に解約返戻金を考慮しない」保険会社を選んで2パターンの設計をしました。

 

まずは10年定期で、保険金額を1億円に設定をして提示しました。

 

「これだと保険料は毎月約14万円です」とお見せすると、Aさんから「ちょっと高いですね・・・。もう少し安くなりませんか?」と言われたので、今度は収入保障の設計を行い、3年後に一時金としての保障額が1億円を確保できるように逆算で設計をしました。

 

「このプランだと月の保険料は約95,000円です。保険金額は年々減っていきますが、2年経過時点では1億円以上の保障があり、ローンが終わる3年後には1億円ちょっとの保障がありますので、この時点で積立の保険へ無診査で変換ができます」とお伝えすると「これがよいですね。とりあえず保障を確保しつつ、3年後に1億円の『枠』も確保してお
くイメージですよね?」とおっしゃいましたので「その通りです」とお応えしました。

 

ご夫婦ともに聡明で、私がご説明した内容はほぼ理解をされ、奥さまからも「法人の資金繰りのことは、私はタッチしていないので分かりませんが、主人がこれでよいと言っているのであれば、私の異論はありません」と言われてお二人からその場で保険契約の了承をいただきました。

 

そしてAさんのご都合がよい日時の候補をいただき、まずは保険加入のために診査を受けて頂く段取りを決めたのですが、この時に私から「実はこのご提示した保険会社は一つ難点があり、万が一、受けて頂いた診査結果によって、保険料の割増とか保険金額の削減といった条件が付いた場合、他保険への変換ができなくなります。そのために、『保険の保険』として、契約に条件が付いた場合でも他保険へ変換ができる保険会社の診査も同時に行っておきたいのですが、よろしいですか?」とお伝えすると、Aさんから「2回も診査
を受けるのですか?」と質問されたので「いえいえ、診査は1回で終わります。同時に2社の診査ができるドクターを手配しますので大丈夫です」とお伝えし、了承をいただきました。

 

面談を終え、玄関で奥さまから「今日はありがとうございました。主人から『保険屋さんがうちに来る』と聞いた時は正直、よい印象をもたなかったのですが、お話を聞かせていただき、本当に来ていただいてよかったです。同じ保険屋さんでもこんなに違うんですね」とおっしゃっていただき、ホッとした気持ちになりました。

 

■  ■

 

後日、先に医務査定を行い、当初の保険会社が無条件引受で承認が下りましたので、無事にこの保険会社にてご契約をお預かりすることとなりました。

 

いったんご契約を頂いた生命保険をその時々の状況に合わせて内容を変更し、最後の最後まで活用することを想定してご提案することの重要性を感じた事例でした。

 

<こちらの記事もご参考までにどうぞ!>

 

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

お問い合わせはこちら

この記事に付いているタグ