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法人生命保険における「30万円特例」の注意点

令和元年の法人税基本通達改定により出来ました、法人生命保険契約における「30万円特例」を適用する場合の注意点を解説します。

 

なお30万円特例の詳細については過去のコラムをご確認下さい。

全損特例のポイント

簡単にまとめますと、1つ目の9-3-5の特例は、解約返戻金がないかごくわずかな定期保険又は第三分野保険の短期払いで年間保険料が30万円以下の場合には、支払保険料の全額が損金処理出来るという内容です。

 

そして2つ目である9-3-5の2の特例は、最高解約返戻率が70%以下で年換算保険料が30万円以下の定期保険又は第三分野保険は支払保険料の全額が損金処理出来るという内容です。

 

これらの特例のポイントは

・他契約を通算して判定するので、合計で30万円以内にすること。

・仮に他の契約を合わせて30万円を超えた場合には、30万円を超えた部分だけでなく全契約が全損適用が出来なくなること。

・令和1年7月8日以前の契約は通算しないこと。

・両方の特例は通算しないこと。

の4点です。

 

注意点①実効税率

最高解約返戻率が70%以下で年間保険料が30万円以下の特例と適用する場合、支払保険料は全額を損金計上出来るので、メリットがあるように思われますが、最高解約返戻率が70%以下ということは、法人の実効税率が30%を超えていないとメリットがありません。

 

法人所得で言えば、2,500万円以上になると実効税率が30%を超えます。この水準になれば多少のメリットはありますが、法人所得1億円でも実効税率は約32%なので、70%の解約返戻率が確保出来ても2%のメリットしか享受てきない点は要注意です。

 

法人経理処理上で判定する最高解約返戻率より返戻率がアップする可能性がある、変額保険または外貨保険以外では、この特例を使うメリットはないと言えるでしょう。ただし変額保険も外貨保険も運用実績や為替レートによって率が下がるリスクがある点は十分、ご注意下さい。

 

注意点②給付債務の発生

「福利厚生制度として70%以下全損の30万特例を活用しましょう」という提案をしている保険営業を見かけます。


確かにこの使い方をすれば、

・養老保険のハーフタックスプランと違い普遍的加入の要件が不要になり、さらに保険料は全額損金計上が可能

・対象者の退職時期によっては、解約返戻金を退職金に充当することも可能

・経営における緊急予備資金として法人の資金繰りに活用することも可能

という様にメリットがあるようにも感じます・・・・

 

一人当たり年間保険料が30万円未満ですから、20名集まれば約600万円の損金を作ることも出来ます。

 

600万円の損金が作れればもちろん法人の規模にもよりますが、決算対策としては多少の効果があるのも事実です・・・・

 

ですが注意点①でも書きましたが、わずか数%の課税繰延効果を得るがためだけに、そして数百万円の損金を作るがためだけに従業員へ保険を掛けることの是非と、それにより退職金規定や弔慰金規定を整備することで、余計な給付債務を法人が背負うことになる是非を踏まえて、くれぐれも慎重に検討してください・・・・

 

注意点③他契約の混入

最高解約返戻率70%以下の全額損金特例と、医療保険やガン保険などの第三分野保険短期払いの特例はそれぞれ別に使うことが出来ますが、それぞれの全損特例は他契約を通算しますので、1契約で30万円以内であったとして、同じ特例の適用を目指した他契約があれば合算します。

 

合算して30万円を超えれば、30万円を超えた部分だけでなく全額が特例適用できなくなりますので、この特例を適用した場合には他契約時にはくれぐれも注意してください。

 

注意点④第三分野の特例について

医療保険やがん保険などのいわゆる「第三分野保険」について、一部では医療保険とがん保険は分けて適用出来るというような情報もあるようですが、短期払いの30万円特例はすべてを合算しますので、医療保険・がん保険・特定疾病保険・介護保険などすべてを合算しますのでご注意下さい。

 

なお法人で契約した第三分野保険については、保険金・給付金受取人を法人にするため、保険金・給付金は法人に支払われます。この法人へ支払われた保険金を被保険者へ支払う場合には「見舞金」として支払いますが、法人が支給する見舞金は「社会通念上妥当な金額」しか損金でしか認められませんのでご注意下さい。

 

このため、法人が受け取る保険金・給付金は益金となり、被保険者へ支払う一部しか見舞金として損金になりませんので、残額は法人所得となり利益が出ている場合には課税対象となりますのでご注意下さい。

 

まとめ

全額損金という言葉の響きは経営者にとって魅力的なのかも知れませんが、本当に法人にとってメリットがあるのかどうか?をしっかりと見極める必要があります。活用の方法を間違えると、本当に「損」をして損金になっただけという事態もあり得ますのでご注意下さい。

 

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

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