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医業承継について

〇医業承継に関するご相談に対応していて感じる事

 

 開業医の先生方からいただくご相談の中で多いのがクリニック・医療法人の後継者問題です。ご子息などで後継者の目処が立っていらっしゃる先生は少数派で、多くの先生は後継者の目処が立っておられないのが現状です。

 

そんな先生方から、数多くのご相談をお受けしてきた中で小職が感じている「医業承継のポイント」を簡単にまとめてみました。あくまでも私見ですので御笑覧頂ければ幸甚でございます。

 

■開業して軌道に乗った時点から後継者問題・終活は考えておいた方が良い

 

開業した当初は、軌道に乗せることが精一杯で先々の事を考える余裕はないかも知れませんが、診療所経営が落ち着いた時点くらいには、クリニックの将来について「いつくらいに誰にどうやって引継ぐのか?」または「いつくらいにどうやって終わるのか?」は考えておいてちょうど良いくらいだと思います。

 

さらに病気や事故などの不測の事態で、診療を休まざるを得ないケースや、診療が続けられないというケースも想定されますので、そういう場合にはどうするのか?一時的な休診であれば、代診医を頼める当てがあるのかどうか?予定よりも早く閉院せざるを得ない場合にはどのくらいの費用が掛かってその準備をどうするか?クリニックを引き取ってくれそうな先があるのかどうか?など、ある程度早い段階からあらゆるケースは想定をしておいたほうが良いです。

 

特に不測の事態が発生した際の対応については、実際に事態が発生してから動き始めたのでは何も出来ないケースが多く、患者様やスタッフ・家族に迷惑をかけるケースもありますので、出来るだけ早い段階からいろいろな想定はしておいた方が良いでしょう。

 

■医療法人化は税効果ではなく後継者問題からアプローチした方が良い

 

開業してから経営が順調になり、次第に医業収益が増えますと、同時に所得税負担が大きくなります。この頃に会計事務所や医業経営コンサルタントから医療法人化の提案を受けられるケースが多くあります。特に税金計算・申告書作成をする会計事務所は、熱心に節税対策として医療法人化を勧めて来ます。

 

 ですが、この節税対策という側面だけから医療法人化を検討すると、将来に大きな問題を残す可能性がありますのでくれぐれもご注意下さい。もちろん節税対策からではなく、分院設立や附帯業務の開始など、経営面からアプローチをして医療法人化をされる先生もおられますが、このケースにおいても将来における後継者問題も踏まえた上で、医療法人化は検討される事をオススメします。

 

なぜなら平成28年施行の第7次医療法改正にて、医療法人のガバナンスが法律的に明文化され、医療法人の運営に厳格化が求められるようになりました。さらに現在は「出資持分のない医療法人」しか設立出来なくなっていますので、医療法人解散時の残余財産は国や地方自治体・その他団体に帰属することを定款で定めなければなりません。

 

後継者がいて、医療法人を引き継ぐ場合には何ら問題はありませんが、後継者が不在のために医療法人を解散することになる場合には、出資持分のない医療法人については、残余財産対策を検討する必要があります。

 

この残余財産対策以外にも、医療法人はそもそも運営上の制約が多いのと、医療法人化することにより院長先生の可処分所得は確実に減少するために、税のメリットだけにフォーカスをして医療法人化を行うと問題が生じる可能性があります。

 

もちろん医療法人化すると、医業承継は理事長や管理医師の交代や社員の退社などの手続きだけで行えますので、承継問題は非常に楽になります。そのために極端に言えば、分院や附帯業務の展開を考えておられない場合については、後継者が決まって、後継者問題がクリアーになった時点で医療法人化をしても遅くないと思います。

 

■後継者が「引き継ぎたいクリニック・医療法人」と思わせる運営を心掛けた方がよい

 

これはあらゆる事業に共通して言える事ですが、後継者が「継ぎたい」と思わせる事業運営をしておけば、後継者問題は比較的簡単に解決します。親族内から後継者が出なくても、魅力的なクリニック・医療法人であれば第三者から「継ぎたい」「買いたい」という要望が出やすいために、後継者問題はより解決し易くなります。

では「継ぎたい」と思わせるクリニック・医療法人にするにはどうすれば良いか?

 

簡単に言えば、医業利益がしっかりと確保出来る経営状況である事と、財務面や人事面でキチンとマネジメントがされているクリニック・医療法人ではないでしょうか?実際に先生方が他のクリニック・医療法人を見て「素晴らしい」と感じられるのと同様に、外部から見て「素晴らしいクリニック・医療法人」と思わせる運営と財務面という内部の充実もともなったクリニック・医療法人であれば、後継者問題はより解決しやすくなります。

 

このためにはクリニック・医療法人の運営をしっかりと行って頂くのと同時に、経営状況が悪化する前に、もしくは先生の健康状態が悪化する前に手を打って、良い状態でバトンを渡しておくことも検討されては良いのではないでしょうか?

 

「生涯現役」にこだわられる先生方は多いですが、「生涯院長」「生涯理事長」である必要はなく「生涯現役医師」として医療の現場にたずさわって頂くことは可能ですので・・・

 

■ご子息に過度な期待を寄せない

 

 ご子息が国家試験に合格をされて、無事に医師免許・歯科医師免許を取得されたとしても後を継がれないケースはかなりあります。やはり「開業医」として経営者の立場になりますと、全責任を背負う事になりますので、このリスクを嫌うご子息も多いのが実情です。下図の調査結果は医業ではなく、中小企業庁が発表している一般の事業会社を対象にした調査結果ですが、参考になると思いましたので引用いたしました。

 親の事業を承継しない理由 (中小企業白書 2005 第 3-2-10 図)複数回答

※親の事業を承継しない理由 (中小企業白書 2005 第 3-2-10 図)複数回答

 この調査結果にある「親の事業に将来性・魅力がないから」という理由はクリニック・医療法人においては少数派かも知れませんが、「自分には経営していく能力・資質がないから」と考えているご子息は一定割合でおられると思います。

 

 そのために国家試験に合格をされても、ご自身の後を継いでくれると過度な期待はされずに、じっくりとご子息を見守って頂き、ご本人やご本人のパートナーが後を継ぐことに前向きな事が分かった時点から期待を掛けて育成されてはどうでしょうか?

 

 もちろん、そこからの準備では間に合わない事もあるかも知れませんので、前述の通り、ご子息がまだ幼い段階であっても、開業間もない状況であってもクリニックの将来について「いつくらいに誰にどうやって引継ぐのか?」または「いつくらいにどうやって終わるのか?」は考えておいて、どちらに転んでも対応が出来る準備と心構えは必要だと考えています。

 

 そのためには、ご子息を含む後継候補者が「引き継ぎたい」と思えるようなクリニック・医療法人運営を心掛けて頂ければ、仮に現実的にどなたも継ぐ方がいないケースでも第三者が運営を引き取ってくれる可能性が出てきます。

 

 皆さまのクリニック・医療法人運営の一助になれば幸甚でございます。

 

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