COLUMN

相続税と贈与税の見直しについて

新聞報道等でご存知だと思いますが、12月10日(木)に自民党より2021年度の税制改正大綱が発表されました。

直接的に大きな影響のある改正はありませんでしたが、気になる文章がありましたのでご紹介しておきます。

 

5.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し

(3)相続税・贈与税のあり方

② 資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討

 

高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。

高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた、経済の活性化が期待される。このため、資産の再分配機能の確保に留意しつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要な課題となっている。

わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。

 諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。

 今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。

 

今回の改正にはありません、相続税・贈与税の見直しについて検討を始めるという一文が盛り込まれています。

 

 生前贈与は資産の再分配として、現役世代に資産移転が進むために経済の活性化の効果が期待出来るとしつつも、贈与税の仕組上、毎年実行すれば税負担を減らす効果があり意図的な相続税課税回避も可能になることを問題視しています。

 

 実際に諸外国においては、相続発生時に加算する過去の贈与分は以下の制度となっています。

・アメリカ:過去分すべて

・イギリス:過去7年分

・ドイツ:過去10年分

・フランス:過去15年分

 

これに対し、日本は

・暦年贈与(毎年の贈与):過去3年分

・相続時精算課税制度を活用した贈与:過去分すべて(相続時精算課税制度による贈与を行った年以後分)

 

 今回の税制改正大綱では、本文中にあるように今後、現行制度を見直して「公平な課税」がされる様に検討していくとありますので、令和3年につきましては従来通りの制度が継続しますが、令和4年以降は何らかの変化があることが予測されます。

 

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

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