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要注意!相続放棄時における生命保険の各種手続き

相続放棄における生命保険の取扱についていくつかの注意点があります。

 

今回は注意すべきポイントについて解説を行います。

 

死亡保険金の請求【個人】

ご存じの方も多いと思いますが、相続放棄をしても生命保険金は受け取ることが可能です。例えば、

 

契約者=夫

被保険者=夫

保険金受取人=妻

 

という契約形態の生命保険契約があり、夫に多額の負債があった状態で亡くなった場合、相続人である妻が相続放棄をしても、妻は保険金を受け取ることが可能です。

 

これは生命保険金を受け取る権利が、夫の財産ではなく、妻が持っている固有の財産であるという考え方に基づいています。

 

 

死亡保険金の請求【法人】

次の例は法人契約の生命保険金を請求する場合です。

 

契約者=法人

被保険者=社長

保険金受取人=法人

 

という契約形態の生命保険契約があり、被保険者である社長が亡くなって、法人が死亡保険金を請求した上で、社長の相続人が相続放棄を検討しているケースです。

 

社長は、法人の借金に対して連帯保証人として設定されているケースが多く、社長が亡くなっても事業が継続して法人が借金返済ができれば問題はありませんが、社長が亡くなったことにより、事業を清算するケースや、売上が減少して借金返済に困るような場合には、社長の相続人は連帯保証債務の対策として相続放棄を検討することがあります。

 

法人契約の生命保険契約で保険金請求をする場合、多くの保険会社においては、亡くなった代表者から新しい代表者へ変更登記を行わないと保険金請求ができません

 

新しい代表者を決める方法は法人の定款に定められており、この定款の定めに従って新しい代表者を選出することになります。ここで注意をしなければならないのが、新代表の選出方法が「株主総会決議」と定められていて、亡くなった社長が法人の株式の大半を所有しているケースです。

 

社長が亡くなりますと、社長が持っていた法人の株式は相続人が相続することになりますが、遺産分割協議が成立するまでの間は社長が持っていた株式については相続人全員で共有している「準共有状態」になっています。

 

この準共有状態で、生命保険金を請求するために法人の代表者変更を行うために株主として株主総会で議決権行使を行えば、民法第921条に定められている「財産処分行為」に該当するため、相続放棄ができなくなります。

 

民法第921条(法定単純承認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

 

1.相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

 

2.相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

 

3.相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

 

 

株主の議決権行使は、民法第921条1項に記載されている「相続財産の処分」に該当するために、法人契約の保険金請求を行うために代表者変更を株主総会で決議すれば相続放棄はできませんので、くれぐれもご注意ください。

 

保険契約の解約

 

契約者=夫

被保険者=妻

保険金受取人=夫

 

という生命保険契約があり、契約者である夫が死亡し、被保険者である妻がこの契約は不要だとして保険契約を解約するケースです。

 

保険契約の解約は、前述の民法第921条に定められている「相続財産の処分」に該当する行為となりますので、相続放棄ができなくなります

 

保険金受取人が先に死亡した場合

 

契約者=夫

被保険者=夫

保険金受取人=妻

 

という生命保険契約があり、保険金受取人の妻が先に死亡しており、受取人変更を行っておらずにその後に被保険者である夫が死亡するケースです。

 

この場合、保険金受取人の地位は他の相続人に相続されますので、この夫妻に子供がいた場合には子供が保険金を受け取ることが出来ます。

 

保険法第四十六条(保険金受取人の死亡)
保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。

 

 

この場合、保険金受取人の相続人が保険金請求権という固有の権利を引き継ぐだけになりますので、財産処分行為に該当はしません。そのために相続放棄は可能です。

 

契約者貸付があった場合

 

契約者=夫

被保険者=夫

保険金受取人=妻

 

という生命保険契約があり、契約者である夫が生前に契約者貸付を利用していたケースです。契約者貸付とは、生命保険契約の解約返戻金の一定範囲内で保険会社から貸付を受ける制度です。

 

この制度を利用して、生命保険会社から貸付を受けている状態で被保険者である夫が死亡すると、妻が受取る保険金から契約者貸付で借りた元金と利息が差し引かれて保険金が支払われます。

 

この契約者貸付分の相殺は、保険金受取人の固有財産からの借入金返済であるため、民法第921条の「財産処分行為」には該当せず、相続放棄は可能です。

 

相続人が受取る入院給付金など

 

契約者=夫

被保険者=夫

保険金受取人=妻

 

という契約形態の生命保険だけでなく、

 

契約者=夫

被保険者=夫

保険金受取人=夫

 

という契約形態の医療保険やがん保険などがあり、被保険者である夫が入院後に死亡をしたケースです。

 

この場合、生命保険契約の受取人である妻は、保険金請求手続きを行うために保険会社へ連絡すると、同じ保険会社で下の医療保険やがん保険があると、同時に両方の保険金請求手続きを行うケースがあります。

 

すでに書いてきましたが、死亡保険金請求権は保険金受取人の固有財産ですから相続放棄は問題はありません。

 

ですが、入院給付金や通院給付金などは本来は被保険者である夫が受取るべき保険金ですから、この入院給付金や通院給付金を相続人が受取ることは財産処分行為に該当することになり、受け取ってしまうと相続放棄ができなくなるケースがあります

 

まとめ

相続放棄をしても受け取れる生命保険金は、残される家族にとっては貴重な資金源となります。

 

ですが、手続きによっては相続放棄ができなくなるケースもありますので、生命保険の取扱には十分ご注意ください。なお、負債以外に自宅などの資産があり相続放棄ができない場合には、限定承認という方法もありますので、負債を相続されてしまった方は、ぜひ専門家へご相談されることをオススメいたします。

 

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<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

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