COLUMN

社長退職金を考える

最近、社長退職金について改めて考えさせられる事例が続きましたので、今回は社長退職金について検討をしてみます。

 

 

まず一番最初に考えなければならないのは、社長退職金を取ることの可否と是非です。簡単に言えば、「社長退職金が払えるかどうか?」そして「払える場合には払ってよいのか?」という事です。

 

まず「払えるかどうか?」ですが、これはそれだけの財源があるかどうか?がまずは重要な問題です。そもそも積立をしていないケースや、積立をしていたとしても金額が不十分なケースは、中小零細企業においては良くある話です。

しっかりと経常利益が出せている法人であれば、勇退を見据えて何年間の間にがんばって積立をすれば、ある程度の金額の支払は可能になるかも知れません。ですが、次の問題として「支払って良いのか?」というハードルに当たります。

 

後継者がおらずに、法人を解散するケースや、後継者がいても十分な原資があれば退職金を支払う事にためらいがないでしょう。ですが、財務基盤が脆弱な中小零細企業において社長退職金を支払ってしまうと、資金が枯渇して後継者がその後の経営に困窮するという事も容易に想定出来ます。そう考えますと、財源があっても払えない・貰えないというケースは多くあるでしょう。

 

実際に今、私が直面している事例はまさに「財源はあるが貰って良いものか?」と現社長が悩まれています・・・

 

事業を継続させて後継者へ引き継がせる事が主目的ですから、退職金を沢山とって資金を枯渇させて経営基盤を脆弱にしてしまっては、全く意味がありません。とはいえ、次期後継者へバトンを渡した後、経営者ご自身のセカンドライフを豊かにするためにはある程度まとまった資金が欲しいというお考えもあり、その狭間で葛藤をされていました。

 

この事例をみて、まだこの法人さんはキチンと退職金が支払えるだけのストックを作ってこられたのは立派ですが、実際に貰うとなるとためらいが出るのは後継者を想う社長のお気持ちなんでしょうね・・・・。

 

退職金支給のために生命保険を活用して計画的な積立を行う事は非常に重要ですが、長期間に渡って保険料を支払続けられる法人さんは、それほど多くはないかも知れません・・・経済環境や経営状況の変化で、途中で取り崩さざるを得ないケースもありますし、そういう場面に遭遇した事も沢山あります。

 

もっとも「将来の退職金」よりも、「今の資金繰り」にフォーカスしている経営者も沢山おられます。

 

このように考えますと、代表者が勇退する際にキチンと退職金が支払える・受け取れる事は素晴らしい事でこのゴールを見据えて今からどう準備するのか?

 

その準備をするために財務状況をどう改善すべきなのか?を考えてアドバイスをしていく必要がありますね・・・・もっとも役員退職金引当金を活用しておけば、会計的には全く問題はないので、やはりその原資の確保と計画的な積立が重要ですね。

 

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

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