COLUMN

生存給付金付定期保険はメリットがあるのか?

生存給付金付定期保険を法人にて活用した場合、果たして本当にメリットがあるでしょうか?

 

今回はこの生存給付金付定期保険を徹底的に分析をします。

今回取り上げますのは、某社の商品です。


<基本スペック>
・3年ごとに被保険者が生存していた場合は死亡保険金の3%が支払われる

・保険期間満了時に被保険者が生存していた場合に保険金額の30%が支払われる

・なおすべての給付金を受取らずに保険期間満了まで据置くことが可能

・保険期間は最短15年。最長期間は80歳満了

・生存給付金の支給原資として解約返戻金が発生するので支払保険料は経理処理が必要

・最高解約返戻率の判定には生存給付金を含めて行う

・積立配当金はあるが、最高解約返戻率の判定には含めない

 


以上が、生存給付金付定期保険の基本的なスペックです。これを踏まえた上で試算を行いました。


<試算例>
~その1~
50歳男性 保険金額5億円
月1,437,500円
保険期間15年
最高解約返戻率82.12%(40%損金)


~その2~
50歳女性 保険金額5億円
月1,349,000円
保険期間15年
最高解約返戻率86.48%(約22%損金)


~その3~
50歳男性 保険金額5億円
月1,325,000円
保険期間20年
最高解約返戻率79.02%(40%損金)


~その4~
50歳女性 保険金額5億円
月1,202,000円
保険期間20年
最高解約返戻率83.40%(40%損金)


50歳男女で保険期間を15年と20年のタイプで試算をしました。

 

保険期間が長くなると最高解約返戻率は低下しますが、女性の場合は85%超になると損金割合が落ちてしまうので、敢えて保険期間を長くした場合にどうなるか?を試算しました。

 

<試算結果>
・本商品は最高解約返戻率の到達が遅く、女性の場合には保険期間満了時が最高解約返戻率に到達する年度となるケースもある上に、最高解約返戻率が85%を超える事も十分想定される。

 

・85%以下の40%損金タイプの場合、保険期間満了時には払込保険料の全額が損金計上されることになる。ただし3年ごとの生存給付金は受取時に益金計上が必要。

なお据置にした場合には、前払保険料を取り崩して据置生存給付金として資産計上することになるが、前払保険料がなくなった時点で益金計上が発生するので、税効果は期待出来ない。


※参考※
保険期間満了時における生存給付金合計額の返戻率

50歳男性・保険期間15年 81.16%

50歳女性・保険期間15年 86.48%

50歳男性・保険期間20年 75.47%

50歳女性・保険期間20年 83.19%

なお生存給付金を全額据置した場合の据置金に付加される利息ならびに積立配当金は考慮せずに返戻率を計算しています。

 

ちなみに配当金を加味して保険満了時の生存給付金合計額に対する返戻率は以下の通りです。

50歳男性・保険期間15年 84.63%

50歳女性・保険期間15年 90.05%

50歳男性・保険期間20年 79.91%

50歳女性・保険期間20年 87.78%

 

ただ本商品についての注意点も当然ながらありますので、思いつく注意点を列記します。


<注意点>
〇毎年付加される積立配当金は、法人税基本通達9-3-8により配当金が付加される事業年度に益金として計上する必要があるので、税効果を考慮する際は積立配当金を除外して検討する必要がある。


〇死亡時は死亡保険金の支給はあるが、単純に死亡コストで言えば当然ながら無解約定期保険の方がコストは安くなる。なお累計保険料から生存給付金と積立配当金を差し引いても無解約定期保険の方がコストは安い。


〇生存給付金受取時は雑収入計上の経理処理となるため、課税繰延効果は得られない。さらに生存給付金を据置にしても据置をした事業年度に

借方 据置生存給付金
貸方 前払保険料

という振替経理処理が必要。これを続けていると保険期間の後半には取り崩す前払保険料がなくなるケースもあり、その場合には、

借方 据置生存給付金
貸方 前払保険料(なければゼロ)+雑収入

という経理処理が必要となるため課税繰延効果は得られない。


〇単純返戻率は5年~6年程度で80%超にはなるが、税効果を加味した返戻率で考えるともともと効果は出せないので、10年以内くらいの解約は契約者が大きく損をする点は要注意。


〇満了年齢時に大きく生存給付金が支払われるため、出口(益金)のコントロールが非常に難しい。


〇解約返戻金はどの年度においても資産計上額+配当金の70%を下回らないので、個人へ契約者変更をする場合には、変更時における解約返戻金+配当金で判定は可能。

ただ保険料が高額なので、出口対策として個人に名義変更をしても個人で保険料負担が可能か?という問題もあるので要注意。特に生存退職金積立をした場合で、保険期間満了前に退職をして本商品を現物退職金として支給をしても以後の保険料負担が出来るかどうか?は十分注意が必要。

 

 

以上が生存給付金付定期保険を徹底的に分析した結果です。


私が出した結論としては、課税繰延効果が得られない上に満了時の益金対策も取りにくい商品なので、この商品を法人で活用するメリットが全く見出せませんでした。

 

単純返戻が100%を下回っている分、契約者が損をする商品で、保険金と解約返戻金の両取りも出来ませんから、保障+積立という機能面からも使えないという印象です。

 

保障が必要であれば低コストの無解約定期保険を、積立が必要であれば単純返戻が出来るだけ早く100%になる全額資産計上の商品を活用する方がメリットはありますね・・・

 

ご参考になれば幸いです。

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

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