COLUMN

事業(医業)承継についての整理

最近、経営者から「後継者が決まったので事業承継を具体的に検討したい」というご相談を幾つか頂いております。

 

このプロセスを整理している途中で、私の中で非常に頭の中がクリアーになったので、今回はこれについて書いてみます。

検討するポイント

事業(医業)承継を行う際に後継者が決まれば、検討するポイントは4つです。

 

1)事業(医業)の運営形態と経営形態の検討

2)時期の検討

3)株式(出資持分)の取扱

4)経営者のマネープラン

 

基本的にはこの順番は前後しませんし、この順番で検討をするのが非常に整理しやすいと思います。

 

1)事業(医業)の運営形態と経営形態の検討

具体的に事業(医業)が安定的に継続するためにどのような形態を取っていくのか?をまずは決める必要があります。

 

承継前と承継後の株主と役員をどう構成するのか?

医療法人であれば社員構成をどうするのか?

 

を決めた上で、どのくらいの期間で移行させるのか?のタイムスケジュールを描く必要があります。

 

業務に支障をきたすような急激な変化は好ましくありませんが、事業形態や後継者の育成状況によっては一気に変化をさせる方法も一考の余地はあります。

 

ここでポイントになってくるのが、現経営者の承継後の地位です。

 

いわゆる「分掌変更」にするのか?

それとも完全に退任をするのか?

 

後述します経営者のマネープランにおける退職金支給時期に影響を及ぼしますし、そのタイミングで自社株(出資金)の譲渡や贈与を検討している場合にはその時期に影響を及ぼします。

 

そもそもが事業(医業)運営上、スムーズに継承するためにどういう手法を取るのか?を検討する必要があります。

 

2)時期の検討

いろいろな「時期」についても検討が必要です。

具体的には、

 

・代表者交代時期

・退職金支給時期

・株式(出資持分)譲渡時期

・医療法人の場合には社員就任時期

 

この4つのタイミングを前述の事業(医業)継続を視野に入れながら検討をしなければなりません。

 

3)株式(出資持分)の取扱

医療法人の場合には、出資持分保有割合と議決権はリンクしていませんから、金銭的な問題と評価の問題だけですが、株式会社の場合には議決権とリンクしていきますので運営(ガバナンス)との兼ね合いが出てきます。

 

もちろん種類株式などを駆使すればこの部分もある程度はクリアーに出来るのでしょうが、株価(出資金)評価だけでは決められない部分も出てきます。

 

さらには後継者の買取資金の問題や、他の相続人からみた場合の不公平感など厄介な問題も発生しますので、この部分は慎重に検討しなければなりません。

 

4)経営者のマネープラン

最後に勇退する経営者のマネープランを検討する必要があります。

 

いつ頃にいくら位欲しいのか?という希望を確認した上で、退職金と株式(出資金)の売却でその希望額がまかなえるのか?という問題です。

 

前述の通り、分掌変更をしてしばらく経営にタッチするのであれば、役員退職慰労金の支給は完全に勇退する時期でないと損金否認のリスクが発生します。

 

あと株式(出資金)の評価額と譲渡価格をどう設定するのか?も重要なポイントになります。

 

評価額通りに譲渡しなければならない決まりは一切ありませんが、評価額とは違う価格で譲渡をした場合には課税関係が発生します。

 

渡す側・受取る側のマネープランを考えた場合に、渡す側は高額で譲渡するに越したことは無いでしょうが、後継者側にその資力がなければ、安い価格で譲渡して、不足部分を退職金で補えば良いですし、逆に退職金を多く取ることで事業継続に支障が出る場合には、退職金は少なめにして高額で買取って貰うことも検討出来ます。

 

 

ただマネープランも前述の1)~3)がないと机上の空論になりますし、実態に即さないプランニングになりますから、注意が必要ですね・・・・

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

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