COLUMN

退職役員の保険について

「役員を対象にする生命保険契約で、その被保険者となっている役員が想定外に早く退任した場合、その契約はどう扱うべきか?」先日、とあるお客様よりいただいたご相談内容です。

 

この法人では、役員に就任すると保障+積立目的で就任した役員を被保険者として生命保険を付保していました。

ところが、数年前に就任した役員が会社とトラブルを起こして退任をしてしまったとの事。そのために契約を解約しようと思うと、まだ十分に返戻率が上がっていないので今解約をするとかなりの損が出ます。この損を何とか回避する方法はないか?というのが相談者のご意向です。

  • 解約をすると大幅に損をする。
  • 払済保険に変更をしても返戻率が低いので挽回することはほぼ不可能。
  • すでに役員は退職をしている。

このような状況下でこの契約はどうすれば良いでしょうか?

 

私が出した答えは、「支払保険料を損金処理せずに解約返戻率が一定に達するまで継続する」という内容です。すでに在籍していない役員を対象にした保険契約が残っているという道着的な問題はありますが、税務的には、在籍していない役員の保険料を損金に計上することが問題なので、それならば損金に計上しなければよいだけの話です。

 

具体的には、これから支払う保険料以上に解約返戻金が増える保険年度まで継続したのちに、解約することをアドバイスしました。

 

具体的な数字で解説します・・・

年間保険料200万円で2年目の返戻率が約20%。
解約返戻金は約40万円

この時点で役員が退職します。

ですがこの契約は、5年目まで継続すれば返戻率は92%まで上がりますので、920万円まで解約返戻金は増加します。という事は3年間で600万円の保険料を支払えば、解約返戻金は880万円増えるという事です。600万円支払って880万円に増えるのであれば、支払保険料の600万円は全額資産計上でも構わないですよね?

実際の数字はもう少し違いますが、大体こんなイメージの契約でした。全額資産計上ですから、仮に税務調査で指摘をされても法人の課税所得は変わりませんので、問題はないかと思います。

このケースでは役員でしたが、法人税基本通達の改訂により従業員を被保険者にしたプランを活用するケースが、増えてくると思います。改訂通達では、払済保険への変更は洗替処理はしてもしなくてもよいルールとなっていますので、払済保険を活用するケースや今回の様に損金計上をせずに継続をするケースも増えてくる事が予想されます。

また、これとは別のケースで、代表取締役が退任をして会長職などに就任をする、いわゆる「分掌変更」において、この分掌変更が適切に行われているという前提ですが、退任時にすべての保険を解約して退職金原資にするのではなく、その先にある相続発生を見据えて減額するなり、変換をして保障を残しておくのも一考です。

法定相続人×500万円分の死亡退職金は非課税ですから、これを受け取るメリットがある経営者であれば、この保険金額だけを残しておくのも一考です。ただし相続発生時に支給する「2回目」の役員退職金が法人側で税務上の損金としてどこまで認められるか?は別の問題ですが・・・。

保険屋の悪いクセとして、税務的なメリット・デメリットで判断しがちですが、もっとフラットな視点で「何がベストか?」を考える必要があると思った事例でした・・・

 

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

下記お問い合わせフォームよりお問い合わせください。

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