COLUMN

主要生命保険会社の2020年度第3四半期決算を分析する

生命保険会社各社の第三四半期決算の状況が公表されました。詳しくは各社の決算情報ページもしくは生命保険協会のコチラのサイトで確認が出来ます。

個人的に主要生命保険会社のデータを拾ってみました。

 

私が注目をしているのは、「どれだけ保険契約を獲得出来たか?」の指標としての「新規ANP」です。

 

ANPとは【Annualized New business Premium】の略で、年換算保険料と言われる指標です。

 

例えば月払保険料5,000円の契約であれば、年換算保険料は、5,000円×12ケ月=60,000円となりますので、ANPは60,000円としてカウントされます。この要領で、半年払い契約ならば半年保険料を2倍し、年払保険料であればその実額がANPとしてカウントされます。なお一時払いについては、一時払い保険料を保険期間で案分などをして調整をしております。

 

この新規ANPは保険会社が、新たに獲得した保険料収入の額を表していますから、その保険会社の営業力や販売チャネルの特徴など、各保険会社の営業状況が良く分かる指標だと思っております。

 

2020年度の第3四半期を見て頂くと、前年度をすると各社の差が非常に大きく見えます。

 

これは2020年4月の全国に出された緊急事態宣言による営業自粛が大きな要因となっていますが、実はその前年2019年は法人税基本通達の改定(いわゆるバレンタインショック)により法人契約の生命保険商品の販売が大幅に規制をされていた時期でした。

 

このため、2019年の法人生命保険商品の販売が出来ずに大きな痛手を受けた保険会社は、2020年は盛り返しているので伸びている様に見えます。逆に2019年の法人生命保険商品の影響を受けなかった保険会社で、新型コロナウィルス感染症の感染拡大による営業自粛の影響を大きく受けた保険会社は2020年度実績は大きく減らしています。

 

さらに言えば2019年の法人生命保険商品の規制と、2020年の新型コロナウィルス感染症による営業自粛の両方の影響を受けている保険会社もあります・・・

 

ちなみにかんぽ生命は前述の問題ではなく、体制不整備による問題で営業停止をしている関係で、2018年度から比較をすると10分の1にまで売上が減少しています。

 

もう一度、この表を再掲しますが、是非とも注目して頂きたいのは、2018年度の実績と2020年度の実績比較です。

生命保険業界全体では47.9%のダウンとなっていますが、その業界平均値よりも大きく減らしている保険会社をピックアップします。

 

・アフラック

・エヌエヌ

・かんぽ

・大樹

・大同

・ネオファースト

・マニュライフ

・三井住友あいおい

・メットライフ

 

前述の通りかんぽ生命は度外視します。残り8社の中で2019年と比較をして業界平均値である24.6%ダウン以上に減らしている保険会社は

・アフラック

・大樹

・メットライフ

の3社です。この3社は2019年の影響も受けながら、2020年のコロナ禍の影響も受けた「ダブルパンチ」状態ですね・・・三井住友海上あいおい生命もこのグループに入っていると言ってよいのではないでしょうか?

 

そして残りの4社

・エヌエヌ

・大同

・ネオファースト

・マニュライフ

は、2019年の法人商品販売規制で非常に大きな影響を受けてマイナス幅が大きかっただけに、コロナ禍でも関係なく前年比では伸びていますが、2018年度実績から見ると半分以下ですから、2019年の影響がどれだけ大きかったか?がお分かり頂けると思います。

 

 

2019年の法人生命保険商品規制で、生命保険による課税繰延効果が得られなくなったために法人生命保険業界は一変しました。法人生命保険販売で数字を伸ばしていた保険会社は軒並み業績が悪化していますし、2020年のコロナ禍では、個人マーケットの訪問販売において数字を伸ばしていた保険会社が苦戦しています。

 

今すぐに何かある訳ではありませんが、新規ANPの減少は新規保険料収入が伸びない事を表していますので、保険会社の経営に及ぼす影響は少なからずあります。

 

このコロナ禍が保険会社各社の経営にどんな影響を及ぼすのか?そして今後の保険会社の健全性はどうなるのか?

 

生命保険を取扱うプロとして、引き続き細心の注意を払って参ります。

 

ご参考までに過去の記事です。

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

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