COLUMN

Case8:役員借入金対策としての逆ハーフタックスプラン

既契約者である医療法人のMS法人の事案です。

このMS法人では、クリニックの業務受託はほぼ行っておらず、物品販売を多少行っている程度ですが、主業は投資物件の管理会社です。

 

理事業と奥様はかなり不動産がお好きで、投資物件をかなり保有されています。

 

投資物件を購入される際に銀行融資も受けておられますが、ご夫妻でもかなり資金を入れておられ、役員借入金残高はお2人で約7,000万円ずつの合計1.4億円になっています。

 

理事長も奥様も60歳代前半で、保有されている資産と将来の相続を考えますと貸付債権に対する相続税課税がかなりの重荷になります。

 

 

それを踏まえて、私から保障の確保をご提案しましたが、解約返戻金のない定期保険はご夫妻ともお嫌いで拒否されました。

 

そのため、私の提携税理士より頂いたアドバイスであるDESと減資を組み合わせたスキームをご提案し、顧問税理士と打ち合わせして頂く様に依頼しておりました。

 

そして数か月後に訪問して、顧問税理士との打ち合わせ結果を確認すると、

 

「税理士は『これだけ高額になれば打つ手がないので、相続発生時に相続人が債権放棄をして法人で債務免除益を計上して法人税を払いましょう。相続税や贈与税と比べると税負担は少ないですから』と言われています」

 

との事でした。

 

この方法は何の根本的な解決になっておらず、聞いた私は絶句をしました。

 

「顧問税理士がその方針であればもっと良い対策がありますので、提案をさせて下さい」とお伝えし、理事長からご了解を頂きました。

 

日を改めて私から提案したのは、養老保険を活用した逆ハーフタックスプランです。

 

養老保険を使った逆ハーフタックスプランとは、

契約者=法人

被保険者=役員

死亡保険金受取人=法人

満期保険金受取人=被保険者役員

とする契約形態のことをさします。

 

法人契約の養老保険に関する支払保険料の経理処理については、法人税基本通達によって定められています。

 

■法人税基本通達9-3-4(1)

契約者=法人

被保険者=役員

死亡保険金受取人=法人

満期保険金受取人=法人

→支払保険料の全額を資産計上

 

■法人税基本通達9-3-4(2)

契約者=法人

被保険者=役員

死亡退職金受取人=被保険者親族

満期保険金受取人=役員

→支払保険料の全額を被保険者への給与とする

 

■法人税基本通達9-3-4(3)

契約者=法人

被保険者=全役員・従業員

死亡保険金受取人=被保険者親族

満期保険金受取人=法人

→支払保険料の1/2を福利厚生費として損金計上、残り1/2を資産計上

 

この法人税基本通達9-3-4(3)の保険金受取人を反対にしたのが逆ハーフタックスプランです。なおこの逆ハーフタックスプランについての経理処理は明確に定められていませんが、死亡保険金受取原資として法人が負担する1/2部分を支払保険料として損金計上し、残り1/2を満期保険金原資として満期保険金受取人に対する給与「等」として処理をするのが一般的とされています。

 

給与「等」としたのは、被保険者に対する経済利益供与は給与だけでなく、【被保険者への貸付金】又は【被保険者からの借入金返済】などもあるためです。

※平成24年1月13日に最高裁判所から出された逆ハーフタックスプランの判決においては、被保険者への貸付金処理がされていました。

 

このため逆ハーフタックスプランにおいては、支払保険料の1/2を損金処理し残りの1/2は役員借入金返済の処理が可能です。

 

逆ハーフタックスプランを活用すれば、保険料払込によって役員借入金残高を減らしつつ、被保険者の死亡時には法人にて保険金を受取りますので、この保険金に対して益金課税をされた後の残額は役員借入金返済原資に充当することが出来ます。しかもご存命中は、法人において税軽減効果が得られて満期を迎えられた際には、一時所得課税にて満期保険金受取人が受け取る事ができます。

※ちなみに本スキームは一部保険会社にて対応は可能(2020年10月現在)ですが、保険会社の健全性や商品性を考慮すると、使って良い保険会社はごくわずかですのでご注意下さい。

 

理事長ならびに奥様へ本プランをご提案したところ、非常に気に入って頂きご採用を頂きました。

 

逆ハーフタックスプランと言えば、節税効果が注目されていますが、実は役員借入金対策には最適なスキームであることはあまり注目されていないのが残念です。

 

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

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